「価値・原則・プラクティス」の適用
発展的考察:価値・原則・プラクティスの連鎖
作成日時:2024-12-29
更新日時:2024-12-29
要約
- エクストリームプログラミングの「価値・原則・プラクティス」の概念は、ソフトウェアの新しい考えや方法を明確に伝えるために使用された。
- 別の領域においても「考えを明確に伝える」ために、この概念は利用できると考える。
- 「価値・原則・プラクティス」の内、どれかが欠けても、あらゆる取り組みは上手く進まないと考える。
価値・原則・プラクティスとは
Beckが著書「エクストリームプログラミング(以下、XP)」において、XPを説明する上で使用した概念。
これを使用し、ソフトウェアの新しい考えや方法を明確に伝えようとした。
Beckの説明に関しては、参考文献を読んでいただくとして、各用語の個人的な解釈としては下記となる。
価値
文字通り価値。目標などの達成したい事物。目的。
価値はプラクティスに目的を与える。プラクティス
作業、活動。
行うことで価値を得る。価値の説明責任を果たす。原則
価値を実現するための活動の指針。
なぜプラクティスが価値を得ることに繋がるかを、説明してくれる。
私はこの「価値、原則、プラクティス」の概念は別領域においても、「考え(価値観)や方法を明確に伝えること」に適用できると考えた。
※XPにおける概念とは異なることに注意。
「組織の取り組み」を例とした別領域への適用
例えば、組織として何か新しい取り組みを始めるとする。
その際に、取り組みの「価値、原則、プラクティス」全てをステークホルダー(関係者全員)に提供する。
そうすれば、その取り組みは上手くいく可能性が高いと考えるし、逆にどれか1つでも欠ければ上手くいかないと考える。
価値(目的・ビジョン)だけを提供しても、社員は動かないし、動けない。
なぜならば、その価値を達成するためには、どう行動すればいいかが分からないためだ。
自分で考え行動する社員も現れる可能性はある。
しかし、その行動が”組織の価値観”にそぐわない可能性がある。
“組織の価値観”に合った行動をする社員が現れる可能性もあるが、そのような社員の登場に期待するのは運任せの側面が強く、全社員にそれを求めるのは極めて困難だ。
プラクティスだけを提供しても、社員は何も考えず作業するだけとなる。
これは自身の行動の意図や目的を理解できず、改善や主体的な貢献に繋がりにくい。
自身の行動の意味を理解できないのだから。そこに成長はない。
Beckも、価値が明確でなければ、プラクティスは機械的な作業となるとした。
価値とプラクティスを提供しても、まだ足りない。
原則、つまり「なぜそのプラクティスが価値に繋がるのか」という理由がなければ、応用や改善が生まれにくいからだ。
自分の作業が価値へと結びつく理由を知ることが出来ないからだ。
そこに改善や新たな発明が発生する可能性は低い。
「価値、原則、プラクティス」
これら3つが揃って、初めて人はその領域における自身の行動の意義を認知すると考える。
何を目指し、何を行い、それはどういう理由なのか。
これらが全て明確である場合にのみ、その取り組みは充実する。
また、取り組みの妥当性を自ら検証し、そこから改善や気付きが生まれ、更なる発展を遂げると考える。
参考文献
- Beck, K.; Andres, C. (著), 角征典 (訳). エクストリームプログラミング. オーム社, 2015.
- AltexSoft. “Extreme Programming (XP): Values, Principles, and Practices”. AltexSoft. 2021, https://www.altexsoft.com/blog/extreme-programming-values-principles-and-practices/, (参照 2024-12-29).
メモ
- 価値の妥当性⇒プラグマティズム
- 価値・原則・プラクティスは内発的動機づけに役立つか
余談:全てを提供できない場合、何を優先すべきか
プラクティスだけでも伝えた方が良いと考える。
例え”思考しない働き”でも最低限の生産性は生まれるから。
そのプラクティスの過程で自ら価値と原則を見つける可能性もある。
発展的考察:価値・原則・プラクティスの連鎖
プラクティスは価値を生み、その価値が次のレベルのプラクティスとなって、さらに高次の価値を生む。
例えば、「コーディング原則の遵守」というプラクティスは
「可読性の向上」という価値を創出するとする。
では、「可読性の向上」という価値は、そもそも何故重要なのか。
「認知負荷の低減」という価値の為。
このように、「価値・原則・プラクティス」は連鎖していく。
これは、ある事象の根本的な理由を「なぜ」で深掘りしていく根本原因分析と似た構造を持っている。